2016/08/24

御朱印ガール、海を渡る。ハワイに「出雲大社」、海外の御朱印集めがブームに




御朱印ガール、海を渡る。ハワイに「出雲大社」、海外の御朱印集めがブームに


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ハワイ出雲大社


全国各地の有名な神社やお寺を訪ねては、墨と筆で書いた寺社などの名前とともに朱印を押してもらう「御朱印集め」。昨今のパワースポット巡りのブームと相まって、御朱印集めを愛好する “御朱印ガール”が急増している。しかも最近は海を越え、彼女たちはハワイに出没しはじめた。
御朱印ガール、次なる目的地はホノルル


『日本大百科全書』(小学館)によると、寺院や神社に参詣・参拝した際に書写した経文を奉納した際に納経の証明として授与されたものが「御朱印」の起源とされる。それが江戸時代の後期から、納経せずとも参拝のあかしとして授けられるように変わり、いまでは御朱印を求める人たちが各地の寺社を訪れるようになった。


御朱印は誰にでも気軽に授けてもらえるが、観光スポットで集められる「記念スタンプ」などとは意味合いが異なる。ある神社の宮司は「お守りやお札と同様、御朱印には神仏や寺社名が記されます。いわば御本尊や御神体の分身なんですよ」と話していた。御朱印帳のまっさらなページに、寺社名などが一字一字ていねいに手書きされ、押印される。印刷物と違って、同じものは存在しない。その人だけが持つオリジナル──という点が、コレクターたちの心に響くのだろう。


御朱印ガールたちはまだ行ったことのない神社やお寺を目指すようになり、最近は冒頭でも触れたように海を越えはじめた。行先は、日系移民のために建てられた神社があるハワイのホノルル。なかでも人気なのが、縁結びの神様として知られる島根の出雲大社の分院「ハワイ出雲大社」である。


ワイキキからバスで直行、青い空に荘厳な建物


ハワイ・オアフ島のワイキキ中心部から路線バスでおよそ30分。チャイナタウンの停留所で降り、川沿いの道(リバーストリート)をダウンタウンに向かって歩くと、白い鳥居が見えてきた。


一礼をして鳥居をくぐり、本殿の前に立つ。歴史を感じさせる荘厳な建物を前にすると、自分がどこにいるのか忘れてしまいそうだ。漢字で表記された「布哇(ハワイ)出雲大社」の文字と、レイをかけた狛犬像が、ホノルルに来ていることを思い出させてくれる。





首にレイのかけられた狛犬がハワイを感じさせる



鳥居の横にある手水舎で手と口を清めてから、階段を上がって本殿へ。一般的な神社参拝は「2礼・2拍手・1礼」が多いが、出雲大社では「2礼・4拍手・1礼」が正式な参拝作法。賽銭箱にドル紙幣を投げ入れるというのも、不思議な感覚だ。参拝を終えて本殿左側の階段を下り、社務所に行くと、3代目宮司の天野大也さん(59)が出迎えてくれた。


「ようこそ、お待ちしていました。路線バスで来られたのですか?」と、笑顔で手を差し伸べる天野さん。「路線バスだと停留所からちょっと歩くので、ときどき迷う人もいるようです。最近は各社のワイキキトロリーがすぐそこの川の橋のところに停まるようになったので、観光でハワイに来た人たちが大勢いらしてくれるようになりました」


ワイキキトロリーとは、旅行会社や航空会社が運行する無料のバスだ。ホノルルの観光スポットにある停留所をぐるぐる巡回し、その会社のツアーを利用して来た人たちが自由に乗り降りできる。出雲大社近くの停留所では、日本から旅行で来た若いカップルや女性グループが降りてくるようになった。


跡継ぎを求められ、渡航を決意


出雲大社にまつられている大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)は「縁結びの神様」として有名だ。その分祠・分院は日本全国にあるが、海外にあるのはここホノルルだけ。日本からの移住者が活発化した明治時代に、信仰心のあつかった日系人たちの「故郷と同じように生活したい」という要望で1906(明治39)年に建てられた。今年は110周年で、秋には記念行事も予定されている。




「戦前には70近い神社がホノルルにありましたが、戦争でほとんどの神社が活動停止になり、閉鎖になったところも少なくありません」と、天野さんは歴史を説明する。





三代目宮司・天野大也さん



東京都内で神社関係の仕事をしていた天野さんがホノルルにやってきたのは、1990年のことだった。ハワイ出雲大社の跡継ぎにならないかという話が舞い込み、渡航を決意。ビザをとるため、島根の出雲大社で2年の経験を積むかたわら、米国永住権を取得した。
ハワイのお守りなら効果も2倍?


天野さんが来た当初は、参拝にくるのは地元の人だけだったというが、数年前に日本のバラエティ番組で取り上げられたのが、ブームのきっかけに。天野さんも番組内で「ヌシカン」と呼ばれて紹介され、人気に火がついた。


「それまでは地元の人たちだけで観光客はほぼ皆無だったのですが、番組で紹介されてからは、ハワイに旅行で来た日本人たちが寄ってくれるようになりました。ワイキキトロリーが2台、3台とかち合うと、もう大賑わいです。御朱印帳を持参してくる女性グループもだいぶ増えました」


参拝マナーがみんなしっかりしていることに、天野さんは驚く。インターネットなどでやり方を調べてくるのだろう。なかには「スタンプラリー」のような軽い気持ちで来る人や、お土産にと御朱印帳を何冊か買って帰ろうとする観光客もいるそうだが、そういう人たちには「御朱印は信仰の対象になるものです。お一人さま一冊しかお渡しできません」と天野さんはきっぱり。一方で、真剣に願い事をしに来る参拝者たちには、御朱印書きのリクエストにも一人ひとりていねいに対応している。





御朱印帳も色鮮やか


「娘さんのために縁結びのお守りを受けて日本に持ち帰ったら、まったく嫁ぐ気のなかった娘が結婚することになったと、わざわざハワイに報告に来てくれた人もいます。お礼参りをしてくれる人がずいぶん増えました。ハワイ出雲大社の縁結びのお守りは、日本の出雲大社の手作りです。お祈りしてお守りに御霊を移したものがハワイに送られてきて、ハワイでも独自にお祈りを捧げますので、効果が2倍になるかもしれませんよ(笑)」





お守りは社務所で入手可能※社務所内は撮影禁止です。今回は特別な許可をいただきました。
ハワイだからこその御朱印


天野さんと話しているあいだも、トロリーバスが到着し、次々と日本人グループが降りてくる。そのうちの一組、東京と横浜から来たという赤迫千晶さんと林咲子さんに話を聞いた。2人はハワイ旅行は何度か来たことがあるものの、出雲大社には初めてとか。「ずっと楽しみにしていました」と口々に話す。


時間をかけて参拝し、二人は社務所へ。赤迫さんはバッグから持参の御朱印帳を引っ張り出す。


「御朱印集めを始めたのは5年前です。ハワイでも御朱印がもらえると知って、ぜひ行きたいとずっと思っていました」と言って赤迫さんが見せてくれたのは、京都の三十三間堂で購入したという御朱印帳だ。いくつもの神社やお寺を訪ねた記録がページにびっしりと残されている。「ハワイは大好きなので、これからは旅行のたびに寄りたいですね」。一方で林さんは新しく社務所で御朱印帳を購入。表紙もカラフルでいかにもハワイの御朱印帳だ。天野さんが「ハワイ出雲大社」と筆で書き、御朱印を押したそれぞれの御朱印帳を2人は嬉しそうに見せてくれた。





御朱印帳を手に、宮司の天野さんと笑顔で記念写真


日本からハワイへ旅行する人の数は、ピーク時の1997年には年間222万人に達していた。けれどここ数年は旅行先も多様化し、年間渡航者数は100万人台の前半で推移。日本人旅行者の6割はリピーターだという。新しいスポットとして注目を集めるハワイ出雲大社。海を越える御朱印ガールたちの登場は、ハワイ人気を盛り上げるひとつの起爆剤になるかもしれない。



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