人と機械の融合
はじめは「まともに返す」ことすらできなかった
卓球ロボットの開発が始まってすぐに、センサとコントローラによる計算で、ラケットを動かすところまでは出来ました。
ところが、何度やってもロボットは空振り。まともに返すことすらできません。人間同士であれば卓球のラリーを続けることは簡単ですが、人と機械がラリーを続けることは非常に高度な技術が求められます。
人が打った球をセンサで捉え、それをどう打ち返したらよいのかを計算したうえで、ロボットを動かして打つ。
そのために、これらをわずか1/1000秒単位で細かく制御しているのです。
開発を担当する柴田は、この空振りの原因究明が難しかったと語ります。
「計算された打点の位置が問題なのか、打つように指令しているタイミングがずれているからなのか。
指令と動作の通信でもタイムラグが発生します。その間にも常にボールは動き続けています。1/1000秒単位の世界での原因究明が本当に大変でした。」
人が打ち返しやすい球を考えてくれる機械
卓球ロボットの最大の特徴は、「ラリーの継続」という目標を人と共有し、それを達成するために、自ら考え判断している点にあります。
そのためには、機械が人の状態を把握して、その状況に応じて相手を支援する行動を取ることが重要になります。卓球ロボットは人とラケットの位置を考慮し、球の三次元位置計測と軌道予測を行い、高速・高精度にロボットを制御しています。これらのばらばらの動きを、1/1000秒単位で同期させて制御しないと空振りしてしまうわけです。
そうすることで、山なりで打つ人には山なりのゆっくりした球を、少し早い球で打つ人には少し早い球を返すことができます。相手が大人でも子どもでも、その人の打ち方に合わせて、その人が打ちやすい場所に返球してくれます。
「でも、人が打った球の軌道が悪く、絶対にラケットが届かないと機械が計算したときでも、あえて限界まで腕を伸ばして空振りするようにしています。全く反応しなかったら悲しいじゃないですか。」
機械にこのような協調性を持たせることは、機械がもっと人に身近な存在となって、人の役に立つようになる。そのための大切な要素だと、技術者たちは考えています。
機械を身近にして、より多くの人に高度な技術の恩恵を届けたい
例えば投手の代わりに投球するピッチングマシーン。
その多くのものはバッターが靴ひもを直していてもお構いなしに投げてきます。 私たちは靴ひもを直すために、一時停止ボタンを押したり、球を避けるため少し離れたところに移動したりするなど、球が当たらないように人が工夫しなければなりません。
現在の自動化の便利さは、まだまだ人の配慮や協力が欠かせないのが現状です。
「ですが、将来的には、様々な種類の機械の動きについて、人が『こういうことをしたい』と機械に伝えるだけで思った通りに動かすことができるようになるでしょう。私たちは、難しい理論を簡単に扱えるようにすることで、人と機械の関係を進化させていきます。」
オムロンの技術者たちは今日も人と機械の未来のために、チャレンジを続けています。
「卓球ロボット」は、このたびアジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC2014」において、「米国メディアパネル・イノベーションアワード 」のグランプリを受賞しました。
「米国メディアパネル・イノベーションアワード」は、米国のIT・家電関係のジャーナリストが、CEATEC JAPANに出展された技術、製品、サービスを現場で徹底取材して、優れたものにアワードを授与するものです。
独自の選考委員会が構成され、革新性に優れ、米国市場への影響力が高いと判断したものが選ばれる賞です。
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